VOICE
2019.07.14
【取材】スワトウ刺繍のデニムジャケット 豊嶋健祐
「こだわり」をもつ

豊嶋健祐(とよしまけんすけ)
香川県出身。某呉服商社勤務。商社マンとしての一面をもちつつ、自身のブランドとして着物の伝統技法を用いた服をプロデュース。学生時代、サッカーで培ったタフさを武器に「こだわり」をもちながら生きることへの大切さについて迫っていく。
練習しつづけると何かが変わる
_ 豊嶋さんは、学生時代どのようなことをされていましたか?
小学生から高校生の頃まで、多くの時間をサッカーに費やしてきました。友達から誘われてなんとなく始めたのがきっかけです。当初は、周囲と比較して私の身長が低く不利な状況で、さらにコーチの指導がとても厳しくて。練習中どつかれることは当たり前でした。
そうしたなかで「なんとかしよう」と幼いながらに考え、考えられることを全て行動(チャレンジ)してきました。身長が低いというデメリットを埋めようと必死になっていましたね。
そうしたなかで、地道な練習をし続けていくと中学生の頃には自分なりの結果が生み出せました。その時には、「練習し続けたらなにかが残る」という満足感と自信が得られたことが懐かしく思います。
しかし、サッカーを続けていくなかでレギュラーを外されたり、怪我をして試合に出られなかったり、同い年で日本代表に選ばれた人がいて悔しい思いもしました。
そのような状況のなかで「(サッカーにおける)自分自身の存在意義とは?」と自問自答し続けていました。そして、考えに考えて見出したのが「くさびのプレー」といわれる一見地味なサッカースタイル。人とは違う、自分ならではのプレースタイルにこだわって日々練習していました。
そうすると、面白いことに見る人が見るとわかっていただけるもんで、細かなところにもちゃんと評価していただきました。目立たないようなところにもしっかりこだわって、努力し続けることはとても大切なことのように思えます。
呉服文化とデニムの可能性
_ 豊嶋さんは現在、呉服商社をとおした「つながり」をもとに自身がプロデュースしている服があると伺いました。どのような服でしょうか?
着物などの伝統技法として使用される、中国三大刺繍の一つ「スワトウ刺繍」を用い、デニム生地との異色の組み合わせでジャケットをプロデュースしました。
というのも、もともと私はデニム好きでジーンズソムリエという資格をとっています。デニムについて、深く学び、触れ合っていくなかで、デニムの可能性を洗練された呉服文化というフィルターをとおして表現してみたいという想いがありました。



デニム生地をスワトウ刺繍で施したジャケット。中国本場の職人にお願いし、時間をかけて完成させた。
ジャケットにはこれまで呉服商社でお付き合いしていた帯留め職人さんにお願いし、吹きガラスで作ったオーダーメイドのボタンを使用しています。
また、裏地は赤色のカラーリングを採用し、敢えて派手に。これは、江戸時代の奢侈禁止令におけるファッションカルチャーを意識しています。というのも奢侈禁止令では、一般の人が派手な服を着ることを禁止していました。そのような法律のもと、江戸時代の男性は羽織の見えない裏側だけは派手にし、ファッションを楽しむという感覚を持ち合わせていました。見えないところに「こだわり」をもつ江戸時代の人の感覚に私は共感しています。
伝統にはいい技法が眠っている
伝統文化には、現在のカルチャーにはない魅力がたくさん眠っているように思えます。活かし方さえ考え、工夫すればもっとかっこよくて、いいものが生み出せると思っています。現在、デニムジャケットのみならずサンプルとして純国産シルクを用いたシャツもプロダク化にむけて試行錯誤しています。今後も自身のブランドとして服を生み出していきます。
記事:汐瀬拓馬
